PD25111 事業継続の人的側面に関する指針
「PD25111事業継続管理 事業継続管理に対する人的側面のガイド」を、日本の組織でどのように活用できるかを解説します。
本ドキュメントは英国規格協会から2010年に出されたガイダンスで、BSIジャパンのサイトより日本語版の購入ができます。詳細はそちらを参照してください。
事業継続目標を達成するために、破壊的な事象によって受けたトラウマを最小化し、人々の生産性や回復力を上げることがこのドキュメントの目的です。日本で想定されている自然災害ではなく、テロを意識している印象があります。
HIA(Human Impact Analysis:人的影響分析)は、BIA(ビジネス影響分析)を補完するために必要だと述べられています。ただ、新型インフルエンザBCPを策定するときに実施したHIAが、人をスキルや役割といった機能面でとらえた「人的機能影響分析」だとすれば、ここでのHIAは、人の心理精神面に注目した「心理的影響分析」です。
長引く復旧業務で自治体職員のメンタル休職者が増えているという問題もあり、BCPの実行性を高めるためにも、BCP担当者の心のケアは重要な事項です。
本書では、人的ケアに関する考慮点が、3つの被災フェーズ、初動フェーズ(発災直後)、事業継続フェーズ、回復後フェーズごとに記載されています。
対象となる人は、
IMT(*1)の重要スタッフ、非重要スタッフ(*2)、契約社員、訪問者、一般社員、顧客、家族、メディアなどです。日本で考慮している「地域住民」は明記されていませんが、自然災害ではなくテロを想定して策定されたためかと思われます。
*1 IMTとはインシデントマネジメントチーム
*2 IMTのメンバではない、緊急時対応計画に動員されないスタッフ
初動フェーズ(発災直後)
PFA(サイコロジカルファーストエイド:心理的応急措置)
発災直後の心のケアにはPFAが含まれます。
PFA日本語版は兵庫県こころのケアセンターのサイトからダウンロードできます。
2種類の避難
1つは、建物外の安全な場所に移動することで、もう一つは、建物内のより安全な場所に移動することです。建物の内にいることが危険か、外に出ることが危険かによって避難先が違い、両者は明確に区別されています。
テロだけでなく、台風や竜巻のケースでも参考なります。
リスクコミュニケーション
安否確認や安全情報の提供などは、既に検討されているリスクコミュニケーションと重なる部分もあります。
電話問い合わせ対応、けが人や死者が出た場合の具体的な対応は、人事部や総務部で参考になります。
事業継続フェーズ
BCPを発動した時のストレス対応を説明しています。
BCP発動時には、平常時とは違う場所で働く、違う業務や異なるグループで働くなど、慣れない環境でのストレスがあります。スタッフの個人的事情も含めてケアすべき点が細かに述べてあります。
・自宅での業務継続
・代替作業場所での事業継続
・追加の交通費の支払い等の補償
・事前訓練 等について考慮点が記載されています。
例えば、代替作業場所に移動する場合
駐車スペースを確保する、到着した時に飲み物と軽食を提供する、移動してきた人の私物が保管できるセキュアな場所を提供するなど。「テロで封鎖されたエリアから移動してきた」という前提が感じられますが。地震の場合も、被害のない近隣施設に移動して事業継続する場合にも参考になります。
回復後のスタッフサポート
平常業務に戻った後も、スタッフの心の回復は個々に違っています。個人が責任を持つ部分(自助)と会社で責任を負う部分があります。心の部分は他者には分かりづらいため、本人が不調に気付き対処することも必要です。
一般的に、どういう人が心の弱さを抱えやすいか、またどのような症状あるかが資料で紹介されていますので、部下を持つ管理職には参考になります。
日本ではまだなじみありませんが、従業員の心のケアを行う、EAP(従業員支援プログラム)を提供する外部エージェントを利用するなど、以前の業務パフォーマンスに戻すための取り組みが説明されています。
BCPは、最悪の事態を想定して策定します。もちろん、かける費用との折り合いも必要ですが、メンタルヘルスケアに関しては平常時から実践できる点も多く、全員が学習し理解を深めておくことも可能です。
レジリエンスを高めるBCP全力訓練
BCP訓練を支援いたします。詳しくは<こちら>をご覧ください。
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