無力感を学習しない学習性楽観主義

やる気がおきない、無力感に陥ることがあります。

心の中のつぶやきは、こうです。


「どうせ、今回もうまくいかない」

「やっても無駄だ」

「行動を起こして失望するくらいなら、何もしない方がよい」


状況を悲観的に捉え、行動が抑止されます。


学習性無力感 (Learned Helplessness)


ポジティブ心理学のマーチン・セリグマンは、1960年代に、

うつ病の予防や治療に活かすために、犬が無力になる研究を行っていました。


最初の実験は、

鎖で犬をつないで逃げられない状態にして、軽い電気ショックを流します。

鼻先でプレートを押せば電流は止められます。


別のグループは、このプレートが壊れていて電流が止められない。

次第に犬は電気ショックから逃げられないことを知り、

不快で避けたいはずの電気ショックから、無抵抗になった。

電気ショックがあっても、何もしなくなったとのことです。


しばらくたって次の実験では、

部屋を低い衝立で仕切って、床に電気ショックを流します。

犬は不快な電気ショックを避けるために、衝立を飛び越え反対側に移動する。

そこでまた電気ショックがあれば、また衝立を飛び越えて片側に移動する。


ところが最初の実験で無抵抗になった犬は、動こうとしません。

環境が変わっても、無抵抗のままだったとのことです。


逃げられないショックを経験したことで、環境が変わっても逃げようとしない。


つまり、最初から無力なのではなく、

経験から学習した結果、無力になったわけです。


これを学習性無力感と言います。


人間でも同じことが確認されています。

電気ショックではなく騒音・不快な音で実験をしたところ

最初の実験で音が止められなかったグループは、

環境が変わった次の実験では、最初から何もしなかった。


失敗が続くと、挑戦をあきらめてしまう。

最初からやる気がおきない、無力感に陥ってしまいます。


無力を学習しない2つの例外 ところが、2つの例外がありました。


経験から無力を学習しないグループ

経験がないにもかかわらず、最初から無力なグループ


神経科学者のスティーブ・マイヤーと共同で、脳の画像診断を使い

この例外についての研究が行われました。


fMRIで脳の動きを調べたところ、

「無力になった時に動いている脳の部分(背側縫線核)」 と   

「無力でない時に動いている脳の部分(腹側内側前頭前野)」がわかりました。


それぞれ、無力スィッチ、希望スィッチと呼ぶことにします。


両者は同時には動いていないことも分かりました。つまり、

無力スィッチがONだと、希望スィッチはOFFになり、

希望スィッチがONになると、無力スィッチがOFFになる


2つの例外は、このように説明できます。

無抵抗になる経験をしても、無力のままではないのは、希望スィッチが入ったから。

経験がなくても無力のままなのは、希望スィッチが機能していなかったったから。


希望スィッチがONになりやすい脳を「楽観脳」、

希望スィッチがONになりにくい脳を「悲観脳」と呼ぶことにします。



楽観脳をつくる 「学習性楽観主義」


希望スィッチが入りやすい「楽観脳」は、

試練や逆境を経験しても無力になりにくいです。

大脳の前頭前野が動いているので、積極的な問題解決が行えます。

無力スィッチをOFFにすることができます。


一方で、希望スィッチが入りにくい「悲観脳」は、

ちょっとした困難でも無力になりやすい。

問題解決への行動がとりづらいので、無力スィッチをOFFにできません。


その人が悲観的か楽観的かは、50%は遺伝性だと言われています。

半分は生まれつきですが、半分は獲得できる。

つまり、楽観的になることは学習できます。


これを、学習性楽観主義(Learned Optimism) といいます。


無力感を学習するのであれば、反対に、楽観主義も学習できる。

以下のステップで学習します。


1.無力感になっている自分に気づくこと

2.楽観的な説明スタイルを実行する

3.希望スィッチをいれる(無力スィッチをOFFにする)


楽観的な説明スタイルは、

困難な状況をポジティブに説明することです。

例えば、このような悲観的な捉え方を、楽観的に説明しなおしてみます。


【悲観的な捉え方】 → 【楽観的な捉え方】


悪いことは永遠に続く → 悪いことは今だけ

いつもうまくいかない → 今回は失敗した

私は能力がない  → 私は経験が足りないだけ

私は不注意な人間だ → このケースは想定していなかった

何をやっても全てだめだ → 今回は例外だ 


つまり、「困難なことは、限定的で、一時的、すぐに回復するだろう」

悩みを大きくしないで、希望がもてるような説明です。

実際は、想像するほど事態は悪くならないものです。


楽観的な説明スタイルは、トレーニングが必要です。

繰り返してトレーニングすることで、希望スィッチが入りやすくなります。


希望スィッチで切替えて、前向きに行動できればレジリエンスです。 無力感を抑制し、たくさんの幸福を招きたいものです。

参考:

The Hope Circuit: A Psychologist's Journey from Helplessness to Optimism

Martin E. P. Seligman




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