思い込みから抜けだす


私たちの思考には「速い思考」と「遅い思考」があります。

速い思考は、直観的、感情的、自動的な思考です。

努力を要せず、複雑なことを簡単に置き換え、ショートカットできる思考です。

一度に複数のことを並行処理できる一方で、

思い込みがあっても修正しずらい特徴があります。

遅い思考は、意識的、論理的な思考、推論です。

熟慮や計算など努力を必要とし、合理的な意思決定ができます。

1つずつのシリアル処理で時間はかかりますが、

理性的であり、弾力的で柔軟な思考ができます。

心理学者でありながら、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン博士は

「人は判断をするとき、直観を多用する傾向がある」と述べています。

直観を使うと非合理的なことがあり、特にリスクがある状況でこの傾向があるようです。

カーネマン博士のいう直観の一つが、思い込みです。

確かに、思い込みで行動してうまくいく場合もありますが、

思考ロジックにエラーがある状態だと、うまくいかない思い込みです。

コンピュータのプログラムに例えると

・永久ループに入って資源だけを浪費して先に進まない状態

・お互いに待ち状態で動けないデットロック状態

・作業を放り出して停止するアベンド(異常終了)

・処理が異常に遅くなるスローダウン

これらが思い込みが引き起こす悪い影響です。

ペンシルバニア大学のオンライン授業で、レジリンス・スキルを学びました。

レジリエンスを鍛えるには、感情をコントロールできることが必要であり、

思い込みから抜け出す方法がレクチャーで紹介されています。

悪影響を及ぼす思い込みは、「5つのワナ(トラップ)」で引き起こされています。

1. 相手の頭の中を読みすぎる

2. 自分が悪いと決めつける

3. 相手や環境のせいにする

4. 心配しすぎて大災害をおこしている

5. 打つ手がないという思い込み

「相手の頭の中を読みすぎる」

相手の頭の中を読みすぎると、

自分は相手の全てを知っていると思い込み、確信があって疑わないので、

事実を確認する行動がとれません。

相手とのコミュニケーションが遮断され、 間違った情報がいつまでも修正されない。

その結果、 誤解が生じ、相手との関係がこじれてしまうというワナです。

苦手な相手とは話しづらい。

このワナに引っかかった経験は誰でもあるのではないでしょうか。

「自分が悪いと決めつける」「相手や環境のせいにする」

自分が悪いと決めつけると、必要以上に悲しくなり、

相手が悪いと決めつけると、不満や怒りの感情が強くなります。

これらは共に、エネルギーを浪費してしまうワナです。

いつまでも悔やんで行動が停滞する。

他人や環境のせいにして、自分でやることはないと決め込んでしまいます。

このワナもなかなか抜け出せません。

「心配しすぎて大災害をおこしている 」

小さな心配事を考えすぎると、

妄想がふくらんで大災害になってしまい、何をしてよいかわからなくなります。

パニック状態をひきおこすワナです。

心配も大きくしすぎると、適切な行動がとれません。

「打つ手がないという思い込み」

打つ手がないというのは、英語ではHelplessness

助けがない、万策が尽きたと、天を仰ぎます。

無力感やあきらめを感じることで、 問題解決のエネルギーをなくしてしまうワナです。

問題を放り投げ、何もしない状態では事態はよくなりません。

打つ手がないと決め込むことが常態化すると深刻です。

さて、この5つのトラップから抜け出すには、どうしたらよいか。

頭の中で思い込みを巡らすことをやめる。

何度も反芻して、エネルギーを低下させるのではなく、行動することです。

「なぜ?」を3回繰り返すとか、 じっくり考えて行動するのが良いとも言いますが、

思い込みがある状態では、逆効果です。考えるより行動です。

ワナからの脱出方法は、

まず、その考えが「正しくない」という前提で情報を集めます。(正確な情報収集)

思い込みは、思考にバイアスがかかった状態なので、

偏りがあるという前提で、疑いながら事実を把握します。

コミュニケーションを閉ざさない点でも、情報収集は有効です。

次に、集めた情報をもとに現実を捉えなおします。(リフレーム)

「それは正しくない。なぜなら・・・・」と思い込みを訂正する。

正しく捉えることで、ストレスから解放され

やるべきことも見えてきます。

そして、とるべき行動を計画します。(プラン)

「ありそうな結果は、・・・だ。だとしたら、・・・ができる」 といったふうに

現実的に対処できるレベルに落ち着かせます。

思い込みは思考のクセで、「速い思考」です。

カーネマン博士は、合理的な意思決定に逆らう人間行動を研究しており、

直観を使いすぎることに警鐘を鳴らしています。

特定の状況で繰り返し起きる思考のエラーは、バイアスであり、本来なら予測できるはずだ。

スピードを落とせば間違いを防げるといっています。

速い思考に頼らず、遅い思考を使うべきということです。

直観や思い込みなど、速い思考はなかなかスィッチを切ることができないので、

思い込みの修正は、何度も繰り返し実践することしか方法はありません。

ペンシルベニア大学のオンラインコースの中でも

レジリエンスは実践が大事だと、何度も繰り返されていました。

動画の再生の一時停止ボタンを押してみるように、

自動再生や早送りしそうな状態を止め、

自分で何度も感情の「一時停止ボタン」を押して、思い込みに気づくことです。

「今のはどうかな?」

「正しい情報を集めよう」

「正しくない。なぜなら・・・だから」

「ありうる結果は・・・だ。だったら、・・・ができる。」

感情の一時停止ボタンは、ストレス軽減にも役立ちます。

参考:

「ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る」 ダニエル・カーネマン 楽工社

「ファスト&スロー(上・下) あなたの意思はどのように決まるか?」 ダニエル・カーネマン  ハヤカワ・ノンフィクション文庫

ペンシルバニア大学 ポジティブ心理学オンラインコース

https://ppc.sas.upenn.edu/opportunities/foundations-positive-psychology-online-course

特集コラム
最近のコラム
カテゴリー
アーカイブ